横浜で天体写真を撮影するときの大問題・・・。それは街の灯による光害ですね。当会員の試みを2022年1月号(Vol.385)からご紹介します。
ナローバンドをRGB に組み込む光害地の画像処理
yuji
ものぐさのため、撮影は全てベランダからにしています。ベランダ撮影の不便な点は⾊々ありますが、最⼤の敵は市街地の光害です。去年までワンショットカラーカメラのZWO ASI 294 MC を使っていましたが、フラット処理が難しく、背景むらがどうも取れませんでした。そのため、今年からモノクロカメラZWO ASI 183MMに移⾏して、なんとか光害に強いナローバンドを活⽤できないか、探ってきました。
画像処理ソフトPixInsight には、NBRGBCombination というスクリプトが⽤意されています。しかし、いろいろとパラメーターをいじってみても、どうも⾊が不⾃然になります。次はHa をR に組み込んだものですが、⾚が⽀配的になります。
Ha とOIII を、それぞれR とG に組み込むと、次のように全て緑になります。
なんとかこのスクリプトに代わるものを探してインターネットで⾏き着いたのが、James Lamb さんのYouTube サイトAdding Ha to Red or Luminance Data です。
私の頭で理解できたのは、Ha からR の成分を取り除き、それをR に付加するというものです。Ha の帯域が7nm、R がおよそ100nm なので、R 成分を取り除いたHanewと、このHanew のノイズ成分(median(Hanew))を取り除いて、新しいRnew を作るのが次の式です。S はHa の強度を調整する任意の倍率です。
Hanew = Ha*100/93 – R*7/93
Rnew = R + (Hanew – median(Hanew))*S
しかし問題は、Ha とR のゲインと露出時間が異なるため、上のような数式をそのまま 使うことができないということのようです。そのためJames Lamb さんは次のように 式を簡略化し、⼆つのパラメーターS1 とS2 を導⼊しました。S2 は通例1 としますの で、S1 を調整するだけで済みます。この値を⼤きくすればHa の残った成分が少なく なります。
Hanew = Ha – R*S1
Rnew = R + (Hanew – median(Hanew))*S2
次は、左のHa から右のR 画像を引き算する前の準備段階です。S1 は0.05 にしています。
ここでできたHanew を、R に加えて作ったRnew を、もとのR と⽐較してみます。左が元のR、右がRnew です。わずかですが、Rnew の星雲のコントラストが上がっています。
同じようにして、OIII をG とB に加え、それぞれGnew とBnew を作ります。これらをRGB 合成したのが次の画像です。まだL 画像を組み込む前ですので、ノイズが多く、コントラストは低いものの、⾊は⾃然になっているように思います。
L 画像は光害地では作れないはずと最初から諦めていて、Ha・OIII・R・G・B 全体をインテグレーションしたものを使うようにしています。緑⾊を取り除き、L を組み込み、多少派⼿⽬に仕上げたのが次の画像です。なお、もう⼀つのナローバンドであるSII は、私の安いフィルターでは輝星に盛⼤なハローが出て使えません。
多少⼿間はかかりますが、光害地でこの撮影と画像処理の⽅法は有効ではないかと思います。なお、撮影鏡筒はタカハシε-130D ですが、今後はRGB を別の望遠鏡にまかせ、タカハシはナローバンド専⽤にして、撮影効率を上げられるようにしようと考えています。
いかがでしたか? 横浜の空でも本格的な天体写真の可能性が拡がってきています。